ピアノの指導を続けていると、
自分では気づけなかった“癖”や“価値観”を生徒が教えてくれる瞬間があります。
ある時、レッスンで思わずこう言ってしまいました。
「それじゃあ賞取れないよ?」
言った瞬間、自分でも「あ、今なんか変な言い方したな」とは思った。
そのとき返ってきたのは、
「賞取れなくて、何が悪いの?」
この瞬間
“私、コンクールの賞に無意識にこだわってたんだ”って、
気づかされました。
私はずっと、生徒の「音楽そのもの」を見ているつもりでした。
でも心のどこかに、「結果が付いてきてほしい」という願いが確かにあった。
それは別に悪いことではないけれど、生徒の純粋な言葉が、その執着をふと見せてくれたんですよね。
今でも正直に言うと、「賞が取れたら嬉しい」という気持ちがゼロになったわけじゃありません。
“賞なんて関係ありません!”とまでは言い切れません。
だけどそれ以上に、今の私はこう思っています。
そのプロセスこそに、私はとことんこだわっていきたい。
あの一言のおかげで、私は「結果」を見る目線よりもその子が音楽と向き合う姿そのものを、もっと大切にしたいと思えるようになった。
これからも考えはきっと深まっていくし、まだ揺れることもあると思う。
でも、生徒が見せてくれたあのまっすぐな言葉は、私にとってずっと軸になる気がしています。